河川・砂防・海岸・港湾は、1級土木施工管理技士 第一次検定のなかでも「専門土木」として毎年安定して出題される重要分野です。河川堤防や護岸の構造、砂防えん堤や地すべり対策の施工、海岸堤防・防波堤・浚渫の特徴など、構造物ごとの目的と施工上の留意点を整理して理解することが得点のカギになります。本分野は数値の暗記よりも「なぜその構造・順序になるのか」という原理を押さえると応用問題にも対応しやすくなります。この記事では本試験の頻出テーマに沿ったオリジナル予想問題6問と、その徹底解説をお届けします。
頻出テーマ早わかり
まずは、この分野で繰り返し問われる主要論点と要点を表で整理します。学習の全体像をつかんでから問題演習に進みましょう。
| テーマ | 頻出の要点 |
|---|---|
| 河川堤防 | 築堤材料の選定、まき出し厚と締固め、堤体の含水比管理、法面勾配、天端・小段の役割 |
| 河川護岸 | 低水護岸・高水護岸・堤防護岸の区分、法覆工・基礎工・根固工の構成、のり止め工 |
| 樋門・樋管 | 函体の不同沈下対策、可とう継手、空洞化(漏水)対策、しゃ水工、地盤改良 |
| 砂防えん堤 | 本えん堤・副えん堤・水叩き、前庭保護工、水通し・袖の役割、施工順序 |
| 地すべり対策 | 抑制工(地下水排除・地表水排除)と抑止工(杭工・アンカー工)の区分 |
| 海岸堤防・護岸 | 傾斜型・直立型・混成型の特徴、波返し工、消波工、根固工 |
| 防波堤 | 傾斜堤・直立堤・混成堤の特徴と適地、ケーソン据付 |
| 浚渫 | ポンプ浚渫船・グラブ浚渫船・ディッパー浚渫船の特徴と適用条件 |
予想問題+徹底解説
ここからは本試験の出題形式に近づけたオリジナル四肢択一を6問出題します。まず自力で解いてから解説を読むと知識が定着しやすくなります。
問1:河川堤防の施工
河川堤防の盛土の施工に関する次の記述のうち、適当でないものはどれか。
- (1) 築堤材料は、できるだけ均一な材料を用い、堤体内に弱い層が生じないように敷き均す。
- (2) 盛土は、各層を水平に敷き均し、締固めながらまき出しと締固めを繰り返して仕上げる。
- (3) 締固めを均一に行うため、まき出し厚はできるだけ厚くし、一度に高く盛り上げるのがよい。
- (4) 堤体材料の含水比は、締固めに適した範囲となるように管理することが望ましい。
正解:(3)
解説:まき出し厚を厚くしすぎると、層の下部まで締固めエネルギーが十分に伝わらず、締固めムラや弱い層が生じます。所定の品質を確保するには、使用する締固め機械に応じて適切なまき出し厚を設定し、薄く敷き均して確実に締め固めることが基本です。したがって(3)が適当でない記述です。(1)の均一な材料の使用、(2)の水平な敷均しと締固めの繰り返し、(4)の含水比管理は、いずれも堤体の品質確保のための基本的な考え方として適当です。盛土の締固めは「薄く敷いて確実に締める」が原則と覚えておきましょう。
問2:河川護岸の構造
河川護岸を構成する各部の名称と役割に関する次の記述のうち、適当なものはどれか。
- (1) 法覆工は、堤防および河岸の法面を被覆して保護する工であり、護岸の主要な構成要素である。
- (2) 基礎工は、流水によって法覆工の上端が洗掘されるのを防ぐために天端に設ける工である。
- (3) 根固工は、河岸の上部に設けて法肩からの越水を防ぐための工である。
- (4) 低水護岸は、洪水時の高水位に対して堤防の表法面を保護する目的で設けられる。
正解:(1)
解説:法覆工は、河岸や堤防の法面を流水や流木などから保護する護岸の中心的な要素であり、(1)が適当です。(2)の基礎工は、法覆工の「下端(基礎部)」を支え、洗掘から守るために法尻に設けるもので、天端ではありません。(3)の根固工は、基礎工前面の河床が洗掘されるのを防ぐために河床部に設けるものであり、「越水を防ぐ」という説明は誤りです。(4)の低水護岸は、複断面河道において低水路の河岸を保護するために設けるもので、洪水時の高水位(高水護岸)を主目的とするものではありません。護岸は「上から法覆工→法尻に基礎工→その前面に根固工」という縦の構成を整理しておくと混同しにくくなります。
問3:樋門・樋管の施工
堤防を横断して設ける樋門・樋管の施工に関する次の記述のうち、適当でないものはどれか。
- (1) 函体に作用する不同沈下に対応するため、函体の継手部には可とう性をもたせた継手構造を用いることがある。
- (2) 函体と堤体の境界部に沿った漏水(水みち)を防ぐため、しゃ水のための対策を講じる。
- (3) 函体周辺の盛土は、締固めが不十分になりやすいため、入念に締め固める必要がある。
- (4) 函体の沈下を確実に防ぐため、軟弱地盤上であっても地盤改良は行わず、剛性の高い大断面の函体とする。
正解:(4)
解説:軟弱地盤上に樋門・樋管を設ける場合、基礎地盤の支持力不足や不同沈下が大きな問題となります。地盤改良などの基礎処理を行わず、ただ函体の剛性を高めるだけでは、地盤側の沈下や函体と周辺盛土の間に生じる空洞化(漏水経路)に対処できません。必要に応じて地盤改良や柔構造化などの対策を組み合わせるのが基本であり、(4)が適当でない記述です。(1)の可とう継手は不同沈下への追従性を確保する手段、(2)のしゃ水工(しゃ水矢板やしゃ水壁など)は函体沿いの水みち(パイピング)防止のための基本対策、(3)の函体周辺盛土の入念な締固めは空洞化・漏水防止の観点から重要であり、いずれも適当です。樋門は「不同沈下」「漏水(空洞化・水みち)」が二大論点と覚えておきましょう。
問4:砂防えん堤
砂防えん堤の構造および施工に関する次の記述のうち、適当でないものはどれか。
- (1) 水通しは、越流する流水や流送土砂を安全に下流へ流すために、えん堤の天端中央部に設ける。
- (2) 袖は、洪水を越流させないように水通し部より高くし、両岸に向かって上り勾配とする。
- (3) 副えん堤や水叩きは、本えん堤からの落下水による下流河床の洗掘を防止するために設ける。
- (4) 砂防えん堤の施工は、一般に下流側の副えん堤を先に完成させ、その後で本えん堤を施工する順序が標準である。
正解:(4)
解説:砂防えん堤の施工順序は、一般に本えん堤の基礎部から着手し、本えん堤・水叩き・副えん堤などの前庭保護工へと進めていく考え方が標準です。「下流の副えん堤を先に完成させてから本えん堤」という順序が常に標準というわけではないため、(4)が適当でない記述です。(1)の水通しは越流水と土砂を安全に流下させるための開口部で天端中央に設けます。(2)の袖は水通しより高くして洪水を中央の水通しに集める役割をもち、両岸へ向かって上り勾配とします。(3)の副えん堤・水叩きは、本えん堤からの落下水による下流河床や本えん堤基礎の洗掘を防ぐ前庭保護工であり、いずれも適当です。各部の「役割」を問う出題が多いので、水通し・袖・水叩き・副えん堤の機能をセットで整理しておきましょう。
※施工順序や各部の具体的な仕様・数値は、最新の砂防関係の基準・指針でご確認ください。
問5:地すべり対策工
地すべり対策工に関する次の記述のうち、抑制工に分類されるものとして適当でないものはどれか。
- (1) 地表水排除工
- (2) 横ボーリング工(地下水排除工)
- (3) 排土工
- (4) アンカー工
正解:(4)
解説:地すべり対策工は、地すべりの誘因(主に地下水・地表水や地形条件)を取り除いて滑動を抑える「抑制工」と、構造物の抵抗力によって地すべり土塊の動きを直接止める「抑止工」に大別されます。アンカー工は、グラウンドアンカーの引張力で土塊を安定させる代表的な抑止工であり、抑制工ではありません。したがって抑制工に分類されないものは(4)です。(1)の地表水排除工、(2)の地下水排除工(横ボーリング工・集水井工など)、(3)の排土工(地すべり頭部の土塊を取り除いて滑動力を低減する工)は、いずれも誘因を低減する抑制工に分類されます。なお抑止工には、ほかに杭工(鋼管杭・深礎杭など)があります。「抑制工=水と地形に働きかける/抑止工=構造物で直接止める(杭・アンカー)」と区分して覚えるのが効果的です。
問6:海岸堤防・防波堤・浚渫
海岸・港湾の構造物および浚渫に関する次の記述のうち、適当でないものはどれか。
- (1) 海岸堤防の傾斜型は、比較的軟弱な地盤や堤防直前で砕波する場所に適しており、堤体への波力が緩和されやすい。
- (2) 直立型の海岸堤防は、比較的良好な地盤で、堤防前面で深い水深が確保できる場所に適している。
- (3) 混成堤は、捨石部の上に直立部(ケーソン等)を据える形式で、水深の大きい場所や軟弱地盤にも適用しやすい。
- (4) グラブ浚渫船は、底面が平坦に仕上がりやすく、広い面積を大量・高能率に浚渫する大規模工事に最も適している。
正解:(4)
解説:グラブ浚渫船は、バケット(グラブ)で土砂をつかんで掘削する方式で、狭い場所や硬い地盤、構造物近接部などにも適用でき、適用範囲が広い反面、底面の平坦な仕上げや大規模・高能率の作業は得意ではありません。広い面積を大量に効率よく浚渫するのは、一般にポンプ浚渫船が適しています。したがって(4)が適当でない記述です。(1)の傾斜型は、のり面で波エネルギーを分散・減衰させやすく、軟弱地盤や前面で砕波する場所に適します。(2)の直立型は、良好な地盤と前面の十分な水深が確保できる場所に適し、用地を節約できます。(3)の混成堤は、捨石マウンドの上に直立部を据える形式で、水深が大きい場所や地盤条件に応じて広く用いられます。浚渫船は「ポンプ=大量・効率/グラブ=適用範囲が広く狭所・硬土に強い/ディッパー=硬い地盤の掘削に強い」と特徴を対比して覚えましょう。
暗記ポイント・まとめ表
試験直前に見直したい頻出の用語・分類を表で整理します。数値の暗記よりも、まず「分類」と「役割」を確実に押さえることが得点につながります。
| 項目 | 分類・要点 |
|---|---|
| 河川護岸の構成 | 法覆工(法面の被覆)/基礎工(法尻の支持・洗掘防止)/根固工(前面河床の洗掘防止) |
| 樋門の二大論点 | 不同沈下対策(可とう継手・地盤改良など)/漏水・空洞化対策(しゃ水工・周辺盛土の締固め) |
| 砂防えん堤の各部 | 水通し(越流・流送土砂)/袖(洪水を中央へ集める)/水叩き・副えん堤(前庭保護=洗掘防止) |
| 地すべり抑制工 | 地表水排除工/地下水排除工(横ボーリング・集水井)/排土工・押え盛土工 |
| 地すべり抑止工 | 杭工/アンカー工(構造物で直接滑動を止める) |
| 海岸堤防の型式 | 傾斜型(軟弱地盤・砕波部に有利)/直立型(良好地盤・深い水深)/混成型(両者の中間的特性) |
| 防波堤の型式 | 傾斜堤/直立堤/混成堤(地盤・水深条件で使い分け) |
| 浚渫船の特徴 | ポンプ式(大量・高能率)/グラブ式(狭所・硬土・適用範囲が広い)/ディッパー式(硬い地盤に強い) |
図解:地すべり対策工の分類
頻出の「抑制工」と「抑止工」の区分を図で整理します。誘因(水・地形)に働きかけるのが抑制工、構造物で直接止めるのが抑止工です。
まとめ
河川・砂防・海岸・港湾の分野は、構造物ごとに「目的」「構成要素」「施工上の留意点」を結びつけて理解することが得点への近道です。河川では護岸の縦構成(法覆工・基礎工・根固工)と樋門の二大論点(不同沈下・漏水)、砂防では各部の役割、地すべりでは抑制工と抑止工の区分、海岸・港湾では堤体型式の使い分けと浚渫船の特徴が定番です。本記事の予想問題と解説を繰り返し確認し、表で分類を整理しておけば、本試験で出題形式が変わっても落ち着いて対応できます。なお、条文番号・基準値・具体的な数値や仕様は改定されることがあるため、最新の法令・技術基準・仕様書で必ずご確認ください。


