1級土木施工管理技士 第一次検定の「法規」分野は、労働基準法・労働安全衛生法・建設業法といった建設業全般に関わる法律から、道路法・河川法・建築基準法・火薬類取締法・騒音振動規制法・港則法など、現場で実際に適用される個別法令まで幅広く問われます。条文の細かな数値や手続きを丸暗記しようとすると膨大になりますが、出題の多くは「誰に・何を・いつまでに」届け出る/申請するかという基本構造に集約されます。本記事では本試験の頻出形式に沿ったオリジナル予想問題を6問用意し、正答の根拠と各選択肢の正誤を丁寧に解説します。確実に得点源にできるよう、暗記すべき要点を表で整理しながら学習を進めましょう。
頻出テーマ早わかり
まずは各法令でどこが狙われやすいかを俯瞰します。「許可・届出の相手方」「数値・期間」「主任技術者と監理技術者の区分」が三大頻出ポイントです。
| 法令 | 主な頻出論点 |
|---|---|
| 労働基準法 | 労働契約・賃金・労働時間・年少者および女性の就業制限・災害補償 |
| 労働安全衛生法 | 安全衛生管理体制(総括安全衛生管理者・安全管理者・統括安全衛生責任者)・作業主任者・特別教育・計画の届出 |
| 建設業法 | 建設業の許可区分・主任技術者と監理技術者・施工体制台帳・一括下請負の禁止 |
| 道路法 | 道路占用許可・道路の使用と占用の違い・車両制限令 |
| 河川法 | 河川区域・河川保全区域における許可・流水占用 |
| 建築基準法 | 用語の定義(建築・建築物)・仮設建築物の制限緩和 |
| 火薬類取締法 | 製造・販売・貯蔵・運搬・消費の許可と取扱者 |
| 騒音振動規制法 | 特定建設作業の実施の届出・規制地域・対象作業 |
| 港則法 | 特定港における航法・許可・入出港届 |
※各法令の具体的な数値・基準・期限は改正されることがあります。最終的な確認は最新の法令や仕様書で行ってください。
オリジナル予想問題6問
以下はすべて本試験の出題傾向を踏まえて新規に作成した予想問題です。実際に解答を選んでから解説を読み、根拠まで理解することを意識してください。
問1:労働基準法(労働契約・賃金)
労働基準法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- (1) 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金や労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
- (2) 賃金は、原則として通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
- (3) 使用者は、労働者が業務上負傷し療養のため休業する期間およびその後一定期間は、原則としてその労働者を解雇することができない。
- (4) 労働契約は、当事者の合意があれば、労働基準法で定める基準を下回る労働条件であっても有効に成立する。
正解:(4)
解説:労働基準法は労働条件の最低基準を定める法律であり、この基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について無効となります。無効となった部分は法で定める基準によることになるため、「当事者の合意があれば基準を下回っても有効」とする(4)は誤りです。(1)は労働条件明示義務に関する記述で正しく、賃金・労働時間など主要な条件は明示が必要です。(2)は賃金支払いの原則(通貨払い・直接払い・全額払い、ほかに毎月1回以上・一定期日払い)の一部で正しい記述です。(3)は業務上の負傷・疾病による療養休業期間中とその後の一定期間、および産前産後の休業期間中とその後の一定期間の解雇制限に関する内容で、原則として正しい記述です。労働基準法は「最低基準を定め、下回る契約は無効」という骨格をまず押さえましょう。
問2:労働安全衛生法(安全衛生管理体制)
労働安全衛生法に基づく安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、適当でないものはどれか。
- (1) 事業者は、一定規模以上の事業場ごとに、その事業の実施を統括管理する者を総括安全衛生管理者として選任しなければならない。
- (2) 一つの場所で元請と下請が混在して作業を行う建設現場では、元方事業者が統括安全衛生責任者を選任し、安全衛生に関する事項を統括管理させる場合がある。
- (3) 作業主任者は、労働災害を防止するための管理を必要とする一定の作業について、都道府県知事が個別に指名する。
- (4) 事業者は、危険または有害な業務に労働者を就かせるとき、その業務に関する安全または衛生のための特別の教育を行わなければならない場合がある。
正解:(3)
解説:作業主任者は、所定の技能講習を修了した者などの中から事業者が選任するものであり、都道府県知事が個別に指名するわけではありません。したがって(3)が適当でない記述です。(1)の総括安全衛生管理者は、一定規模以上の事業場で事業の実施を統括管理する者を事業者が選任するもので正しい内容です。(2)の建設現場のように元請・下請が混在する場所では、混在作業による労働災害を防ぐため統括安全衛生責任者を選任して統括管理させる仕組みがあり、正しい記述です。(4)の特別教育は、危険・有害業務に就かせる際に事業者が行う必要があるもので正しい内容です。「誰が選任するか=原則として事業者」「作業主任者は技能講習修了者等から選任」という流れを押さえると、知事や労働基準監督署長が選任するという誤りの選択肢を見抜けます。なお、具体的な対象作業や事業場規模の数値は最新の法令でご確認ください。
問3:建設業法(技術者制度)
建設業法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- (1) 発注者から直接請け負った建設業者は、その工事を施工するため締結した下請契約の総額にかかわらず、必ず監理技術者を置かなければならない。
- (2) 建設業者は、請け負った建設工事を、いかなる場合も一括して他人に請け負わせてはならないのが原則である。
- (3) 主任技術者および監理技術者は、工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる者であるが、品質管理には一切関与しない。
- (4) 建設業の許可は、一度受ければ更新の手続きをしなくても永久に効力を有する。
正解:(2)
解説:建設業法では、一括下請負(丸投げ)は原則として禁止されています。施工の責任の所在を不明確にし、発注者の信頼を損なうおそれがあるためです。よって(2)が正しい記述です。(1)は誤りで、監理技術者を置く必要があるのは、発注者から直接請け負った工事について下請契約の総額が一定金額以上となる場合(特定建設業に係る場合)であり、総額にかかわらず必ず置くわけではありません。一定額未満であれば主任技術者で足ります。(3)は誤りで、主任技術者・監理技術者は施工計画の作成、工程管理、品質管理、技術上の指導監督などを担う立場であり、品質管理にも当然関与します。(4)も誤りで、建設業の許可には有効期間が定められており、引き続き営業するには更新を受ける必要があります。具体的な金額の区分や許可の有効期間は改正されることがあるため、最新の法令でご確認ください。
問4:道路法・河川法(占用・許可)
道路法および河川法に関する次の記述のうち、適当でないものはどれか。
- (1) 道路に工作物や物件を設けて継続して道路を使用しようとする場合は、道路管理者の道路占用の許可を受ける必要がある。
- (2) 河川区域内の土地において工作物を新築・改築・除却しようとする場合は、原則として河川管理者の許可を受ける必要がある。
- (3) 河川区域内で土地の掘削や盛土など土地の形状を変更する行為を行う場合も、原則として河川管理者の許可が必要である。
- (4) 道路の占用許可は道路の交通の安全を確保するための警察署長の許可であり、道路管理者の関与は不要である。
正解:(4)
解説:道路を継続的に使用するために工作物などを設ける「道路占用」の許可は、道路管理者が与えるものです。一方、工事や行事などで一時的に道路を使用する「道路使用」の許可は、交通の安全確保の観点から警察署長が与えるもので、両者は目的も許可者も異なります。(4)は占用許可を警察署長の許可と誤って説明し、道路管理者の関与を不要としている点で適当でなく、これが正解です。(1)は道路占用許可の説明として正しい内容です。(2)・(3)はいずれも河川区域内における工作物の新築等や土地の形状変更について、原則として河川管理者の許可が必要であるという内容で正しい記述です。「占用=管理者の許可」「使用=警察署長の許可」という対比を押さえると失点を防げます。なお、許可を要する行為の範囲は法令で細かく定められているため、最新の条文でご確認ください。
問5:火薬類取締法・建築基準法
火薬類取締法および建築基準法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- (1) 火薬類を爆発させ、または燃焼させる消費を行おうとする者は、原則として都道府県知事の許可を受けなければならない。
- (2) 火薬庫を設置し、火薬類を貯蔵しようとする場合は、原則として都道府県知事の許可が必要である。
- (3) 工事現場に設ける現場事務所などの仮設建築物については、建築基準法の一部の規定の適用が緩和される場合がある。
- (4) 火薬類の取扱いは、安全のため誰が行ってもよく、特別な資格や経験は一切不要である。
正解:(4)
解説:火薬類は取扱いを誤れば重大事故につながるため、その取扱いには資格や一定の制限が課されており、「誰が行ってもよく資格や経験は一切不要」とする(4)は明らかに誤りです。火薬類取締法では、製造・販売・貯蔵・消費・運搬などの各段階で許可や届出、取扱責任者などの仕組みが設けられています。(1)の火薬類の消費は原則として都道府県知事の許可を要するという内容、(2)の火薬庫の設置(貯蔵)にも原則として都道府県知事の許可を要するという内容は、いずれも法の基本的な枠組みに沿った正しい記述です。(3)の仮設建築物に対する建築基準法の制限緩和は、工事現場の事務所や下小屋などについて一部規定の適用が緩和される場合があるという内容で正しい記述です。火薬類は「各段階で許可・届出が必要」「取扱いには制限がある」という安全管理の思想を押さえてください。許可の主体や緩和される具体的な規定は最新の法令でご確認ください。
問6:騒音振動規制法・港則法
騒音規制法・振動規制法および港則法に関する次の記述のうち、適当でないものはどれか。
- (1) 指定地域内で特定建設作業を伴う建設工事を施工しようとする者は、原則として作業開始前に市町村長へ届け出る必要がある。
- (2) 特定建設作業とは、著しい騒音または振動を発生する作業として定められたものであり、使用する機械や作業の種類によって対象が区分される。
- (3) 特定港において船舶が工事や作業を行おうとする場合などには、港長の許可を受けなければならないことがある。
- (4) 特定建設作業の届出は、騒音や振動の大小にかかわらず一律に環境大臣へ直接行うものであり、市町村は関与しない。
正解:(4)
解説:騒音規制法・振動規制法における特定建設作業の実施の届出は、原則として作業を行う場所を管轄する市町村長に対して行うもので、環境大臣へ直接届け出るものではありません。したがって「環境大臣へ直接行い市町村は関与しない」とする(4)は適当でなく、これが正解です。(1)は届出先が市町村長で、原則として作業開始前に届け出る点で正しい記述です。(2)は特定建設作業が著しい騒音・振動を発生する作業として定められ、機械や作業の種類で対象が区分されるという内容で正しい記述です。(3)の港則法では、特定港における工事や作業について港長の許可を要する場合があり、正しい記述です。届出・許可の相手方として「特定建設作業は市町村長」「港則法は港長」をセットで覚えると整理しやすくなります。規制地域の指定や対象作業の細目は最新の法令でご確認ください。
暗記ポイント・まとめ表
法規分野は「許可・届出の相手方」を取り違える設問が多く出ます。下表で相手方を一気に整理しましょう。具体的な金額・期間・規模の数値は改正があり得るため、ここでは確実な「相手方・基本構造」に絞っています。
| 手続き | 相手方(原則) |
|---|---|
| 道路の占用(工作物の継続使用) | 道路管理者 |
| 道路の使用(工事等の一時使用) | 警察署長 |
| 河川区域内の工作物の新築等・土地形状変更 | 河川管理者 |
| 特定建設作業の実施の届出(騒音・振動) | 市町村長 |
| 特定港での工事・作業等 | 港長 |
| 火薬類の消費・貯蔵(火薬庫設置) | 都道府県知事(原則) |
次に、技術者制度と安全衛生体制の用語を区別して整理します。混同しやすい用語をペアで覚えると効果的です。
| 用語 | 位置づけ・役割 |
|---|---|
| 主任技術者 | 建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる(原則として配置) |
| 監理技術者 | 下請契約の総額が一定額以上となる元請工事で配置する技術者 |
| 総括安全衛生管理者 | 一定規模以上の事業場で事業の実施を統括管理する者 |
| 統括安全衛生責任者 | 元請・下請混在の現場で安全衛生事項を統括管理する者 |
| 作業主任者 | 一定の危険・有害作業について技能講習修了者等から選任 |
図解:許可・届出の「相手方」を見分けるフロー
設問で迷ったら「何をしたいのか」から相手方をたどると正答にたどり着けます。下図のイメージで整理してください。
※上図は学習用に相手方の対応を整理した概念図です。実際の適用範囲や例外は最新の法令でご確認ください。
まとめ
法規分野は範囲が広く一見とっつきにくいものの、出題の核心は「許可・届出の相手方」「主任技術者と監理技術者など技術者・管理者の区分」「一括下請負の禁止など建設業法の原則」に集約されます。本記事の6問で確認したように、道路は占用が管理者・使用が警察署長、河川は河川管理者、騒音振動の特定建設作業は市町村長、特定港は港長、火薬類は各段階で許可・届出が必要、という対応関係を押さえれば、ひっかけ選択肢の多くを見抜けます。数値や金額の細目は改正の可能性があるため、最新の法令や仕様書で必ず最終確認をしつつ、まずは確実な基本構造を反復して定着させましょう。法規は努力が点数に直結しやすい得点源です。本番までに繰り返し解いて、確実な1点を積み上げてください。


