【コンクリート技士】コンクリートの耐久性について徹底解説!

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コンクリートの耐久性について

コンクリート構造物は設計で定められた耐用期間中、設計された要求性能を満たしている必用があります。コンクリート構造物の耐久性とは構造物の性能や機能の経時的な低下に対する抵抗性のことです。以下に経年劣化による性能低下の概念図を示します。

耐用年数まで性能を維持する考え方として2つを例にあげます。

②経年劣化による性能の低下を穏やかにする方法
③初期の性能を高めることで耐用年数まで性能を維持する方法

コンクリートの劣化機構について

 コンクリートの劣化現象には、塩害、中性化、化学的侵食、アルカリ骨材反応などの化学的なものと、凍害、すりへり作用などの物理的なものがある。実際の劣化現象は、複数の劣化作用の複合で進行することが多い。

引用(コンクリート工学会:公益社団法人 日本コンクリート工学会 (jci-net.or.jp)

塩害

コンクリートの塩害とは、コンクリート中に存在する塩化物イオンの作用によって鋼材が腐食し、コンクリート構造物に損傷を与える現象を指します。

塩害の原因は、コンクリート中の塩化物イオンの濃度が一定以上になって鉄筋の不動態皮膜が破壊されることです。塩化物イオンは、コンクリートの材料(混和剤、セメント、練り混ぜ水)に最初から含まれているものと、海水や潮風、道路に撒かれた凍結防止剤などの塩化物がコンクリート表面から浸透するものがあります。

塩害による劣化現象は、鉄筋に沿って錆び汁をともなったひび割れや剥離、鉄筋の露出などとして現れます。さらに補修を施しても経年とともに再劣化する可能性が高いと言われています。

塩害からコンクリートを守るための対策として以下が挙げられます。

①普通ポルトランドセメントから高炉セメントにする

潜在水硬性を有する高炉スラグ微粉末を用いてコンクリートを緻密化できる。その水和物が塩化物イオンを固定化する効果もあるので塩害対策に有効。

②水セメント比を小さくする

塩化物イオンの侵入はコンクリートの組織が緻密なほど抑制できる。

③エポキシ樹脂で加工された鉄筋を用いる

鉄筋腐食には水と酸素の供給も必要なので、鉄筋に水や酸素、塩化物イオンが直接接触しないように加工することは塩害対策に有効。

④かぶりを大きくする

塩化物イオンの到達時間を長くすることができる。

塩害をより詳しく理解したい方へ

コンクリートはpH12~13程度の強アルカリ性を示します。高アルカリにある鉄筋の表面に酸素が化学吸着し酸化物層をつくることで不動態皮膜が形成されます。

不動態皮膜の厚さは約3nm(1*10^-9m)で、主成分はγ-Fe3O4・nH2Oという水和酸化物とされています。この被膜は非常に緻密で、外部との電子のやり取りをシャットアウトし、鉄筋の腐食を防ぎます。

不動態被膜:コンクリート中の鉄筋が腐食から保護されるための非常に薄い(約3nm)の酸化皮膜

しかしコンクリート中に許容濃度以上の塩化物イオンが存在すると不動態皮膜が破壊され鉄筋が酸化反応し腐食していきます。

以下に塩害のメカニズムと反応機構を示します。

塩害発生メカニズム

  1. 塩化物イオン量が許容値を超え浸食し、不動態皮膜が破壊される
  2. 鉄筋から鉄イオン(Fe2+)が溶出する反応が起こる←アノード反応
  3. アノード反応で生じた電子と酸素と水が反応し、水酸化物イオンを生成する←カソード反応
  4. アノード反応で溶出した鉄イオン(Fe2+)とカソード反応で生成された水和物イオンが反応し水酸化第一鉄(Fe(OH)2)を生成する
  5. 鉄筋の腐食箇所は2.5倍程度に膨張するためひび割れが発生する

アノード反応

Fe Fe2+  +   2e-

カソード反応

H2O + 1/2O2 + 2e- 2OH-

水酸化第一鉄 反応式

Fe2+ + 2OH- Fe(OH)2

 

中性化

◆中性化とは

コンクリートの中性化とは、空気中の二酸化炭素とコンクリート中の水酸化カルシウムが反応して炭酸カルシウムになり、コンクリートのアルカリ性が低下する現象のことを指します。これはコンクリート構造物の耐久性における劣化機構のひとつです。

Ca(OH)₂+CO₂→CaCo₃+H₂O

 

◆中性化の原因

中性化の原因は、大気中の「二酸化炭素」です。中性化が進行すると、コンクリート内の鋼材が腐食し、コンクリートにひび割れが生じる可能性があります。一般的にpHが11より低くなると鋼材の不動態皮膜が破壊され腐食が起こるとされています。

 

◆中性化に影響を及ぼす要因

  1. 二酸化炭素濃度が高い:乾燥し、二酸化炭素濃度の高い屋内側のほうが中性化が進行しやすい
  2. 湿度が低い:湿度が低く、乾燥しているほうが二酸化炭素の侵入が容易になるから
  3. 温度が高い:温度が高いほうが炭酸ガス濃度の拡散や炭酸化反応が活発化するから

ほど中性化速度は速くなるとされています。しかし著しく乾燥している場合や濡れている場合は中性化は進みづらくなります。

中性化の進行を表す式: X=b√t  (b:中性化速度係数、t:時間)

【注意】また高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートの場合、セメントの水和過程で生成する水酸化カルシウムと反応してコンクリート中のOH-濃度を減少させることで、普通ポルトランドセメントよりpHが低くなっているため、中性化の進行も速くなってしまいます。

 

◆中性化の対策

中性化を防ぐための対策は、二酸化炭素をコンクリート中に入らせないようにすることです。具体的には、タイルや石張りなどで仕上げを行う、かぶり(厚さ)を大きくしたり、気密性の吹付け材を施工するなどの方法があります。

アルカリ骨材反応

◆アルカリ骨材反応とは

アルカリ骨材反応とは、コンクリートに含まれるアルカリ性の水溶液が骨材の不安定な成分と反応し、膨張性の物質が生成され、これが骨材の内部や周囲に膨張圧を生じさせることでひび割れが発生する現象です。

◆アルカリ骨材反応のメカニズム

コンクリート中のセメントに含まれるナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属イオン(アルカリ性細孔溶液)が反応性シリカ成分を含む骨材と反応し、骨材の周囲に反応生成物(シリカゲル)が形成され水分を吸収し、その膨張圧によってひび割れが発生する。

アルカリ骨材反応は以下の3つの条件が揃って起こることがわかっています。

  1. 反応性骨材(シリカ鉱物、ガラス鉱物)がある量以上存在すること
  2. 細孔溶液中に十分な水酸化アルカリが存在する(OH-濃度)
  3. コンクリートが湿潤状態にあること

◆アルカリ骨材反応の対策

現状としてアルカリ骨材反応をすぐに調査できる方法がないため、設計の段階で耐久性の照査は行っていません。配合段階でアルカリ骨材反応を抑制するような対策が求められます。以下に示す3つの対策を1つでも講じることでアルカリ骨材反応に対する耐久性を満足するものとしています。

①コンクリート中のアルカリ総量規定

アルカリ総量を3.0kg/m3以下

②アルカリ骨材反応抑制に寄与するセメントの使用

高炉セメントB種、C種 又は フライアッシュセメントB種、C種の使用

アルカリ骨材反応はpHが高いほど進行しやすい。高炉スラグ微粉末やフライアッシュはセメントの水和生成物と反応しpHを低下する効果があるのでアルカリ骨材反応抑制に寄与する。

③ASR反応試験で「無害」と判定される骨材の使用

 

◆ペシマム量

ペシマム量とは、アルカリシリカ反応による膨張量が最も大きくなる時の反応性骨材の割合を指します。反応性骨材の割合が多ければ多いほど、アルカリシリカ反応による膨張が大きくなるわけではありません。 ペシマム量はセメント中のアルカリ量、骨材の種類や粒度などによって変化します。 したがって、反応性骨材をペシマム量以下にコントロールすることが、アルカリシリカ反応の抑制につながります。

凍害

◆凍害とは

コンクリートの凍害は、コンクリート内部の水分が凍結膨張し、未凍結の水分が移動する際に生じる水圧がコンクリートを破壊する現象を指します。水から氷になるときに約9%程度体積膨脹が生じます。

凍害には硬化前に凍結してしまい強度低下を招く初期凍害と、硬化後に水分の凍結融解によりひび割れやスケーリング、ポップアウトを伴う凍害に分けられます。

◆凍害対策

  1. 吸水率の小さい骨材の使用:吸水率が小さい骨材を使用することで、コンクリート内部への水分の浸透を防ぎます。
  2. エアエントレインメント:AE剤あるいはAE減水剤を使用して、適正量のエントレインドエアを連行させます。これにより、凍結膨張による内部圧力を緩和し、コンクリートの破壊を防ぎます。
  3. 水セメント比の低減:水セメント比を小さくして密実なコンクリートとすることで、水分の浸透を防ぎます。

◆耐凍害性の評価

コンクリートの凍結融解試験は、コンクリートの耐凍害性を評価するための重要な手段です。日本工業規格(JIS)A 1148に基づいた試験方法が一般的に用いられます。以下に、主な試験手順を示します。

供試体の作成:供試体は通常、100×100×400mmの寸法で作成されます。
凍結融解の繰り返し:供試体を急速に凍結及び融解させます。この凍結融解の1サイクルは、供試体の中心部温度が5°Cから-18°Cに下がり、また、-18°Cから5°Cに上がるものとします。
測定:凍結融解36サイクルを超えない間隔で、たわみ振動の一次共鳴振動数と質量を測定します。
評価:相対動弾性係数、耐久性指数、質量減少率などにより評価を行います。
試験は通常、300サイクルで終了しますが、相対動弾性係数が60%以下になった場合は、そのサイクルで試験を終了します。

 

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